ウルトラセブンについて その1
以下、1997年頃(ウルトラマンティガ本放映頃)に書き下ろした古い論説ですが、
「私のウルトラセブン考」をお伝えするのに適した文章と思い、当時の文章のまま
再録いたしました。お暇がございましたら、ぜひ、ご一読ください(2002年5月)。


世の中の「ヘンだな?」という事象を、面白おかしく紹介する『vow』という本の
シリーズをご存知でしょうか。その中に、「怪獣vow」という、特撮物という、
かっこうの題材を扱った3部作がありました。以下はその最終巻である、
「さらば怪獣vow」の中の記事に対して論説を行ったものです。


「さらば怪獣VOW」誌上、『ウルトラ兄弟裏切りの系譜』において
【セブンはゾフィーに嫌われているらしい】と憶測されている。

その理由・内容については後述するが、実際、それは事実なのか?

ここに、セブンの人格・立場・生き様を掘り下げ、上記の命題の検証にあたりたい。
ただし、命題はTV作品「ウルトラセブン」のみに与えられたものでなく、検証に
おいては、私が今まで目にした全ての情報をもとにする。
ウルトラセブン本編および、ウルトラシリーズ作品内で語られることを『事実』
とし、各種図鑑などの内容を『資料』、雑誌類の中で語られる内容を『情報』
として考察する。
VS
私の知り合いで、セブンは頭を使わない肉体派の戦闘バカと思い込んでる御仁が
いたが、これはとんでもなく屈辱的な誤解である。
作品を見れば、セブン=苦悩するヒーロー、つまり文系の人格であることは明白で
ある。彼の戦闘的なフォルムや、見事な戦いぶりと圧倒的な強さに「肉体派」を
イメージしてしまったのだろう。

実際、強いのは間違いなさそうだ。情報誌によれば、ウルトラ族には“シルバー族”と
“レッド族”の2派があり、前者が、ウルトラマンのように銀色のボディを基調とする
頭脳派のウルトラ族、後者がセブン系の赤基調ボディを持つ肉体派とされている。
ついでに言えばウルトラマンの職業は地球人に例えると学校の先生、セブンは何と
武士!だと言う。ネタもとが小学○年生なので、わかりやすくしたのだろうけど、
『武士』っていうのは凄い表現だ。もっとも、ウルトラの父はエンペラー星人との
戦争に勝利した功績で大隊長に就任したらしいから、戦(いくさ)で天下を平定した
「将軍」と考えれば、あながち間違いとは言えない。

初代ウルトラマンも先生ってわりには、ベムラーの護送なんかしていて、警官だと
思ってたんだけどね(笑)。
セブンは現在、宇宙警備隊の最強武闘派集団:勇士指令部に所属するらしいから、
やっぱり武士、あるいは騎士って所か。

まぁとにかく強いことは間違いないと言える。が、だからと言ってセブンを
「体育系」と判断するのは早合点である。


もともと彼が地球にやって来た経緯を思い出していただきたい。
彼は恒天観測員であり、恒星間座標図の作成という、いわゆる理系のお仕事をして
いたわけである。ビームランプをカラータイマーの代用として改造したり、ウルトラ
ブレスレットの開発(情報誌の記述では作成したのはゾフィーだとする説もあるの
だが、ネタの少ない長兄のために捏造したガセねたと思われる)を行うなど、
科学的な知識も豊富に持っていたと考えられる。

彼は、本当は穏やかな暮らしの中で学問にいそしみたいと思っていたに違いない。
でなければ、勇士司令部部長の息子で、大隊長の甥という超武闘派エリートが、
実際に能力が高いにもかかわらず、ノホホンと恒天観測なんかしてる訳がない。
そんな彼にある日事件が起こる。
おそらくエリートの坊ちゃんで世間知らずだった彼が、侵略者の毒牙にさらされた
か弱い星=地球に渦巻く悪意の視線に気づいてしまったのだ。

地球に飛来したセブンは、薩摩次郎という勇敢な青年に心を奪われ、本来の仕事を
捨ててまで、地球を守る決意をする。
セブンにとって、或いは悲劇となってしまったのは、最初に出会った地球人が次郎
だったことかもしれない。それが、ダイヤモンド・キックあたりの悪党であった
なら、運命は大きく変わっていたのかもしれない…。


セブンも全地球人を肯定している訳ではない。事実、マヤに地球を“狂った星”と
形容されても否定できずにいた。
彼は長所・短所ひっくるめて、地球人に「恋」をしてしまったのだろう。
そして地球の平和、ひいては宇宙の平和を取り戻し、いつの日か穏やかな暮らしが
帰ってくるのを夢見て、ファイターとしての才能を、一気に開花させたのだ。

『さらば怪獣VOW』によれば、こうしたセブンの行動がゾフィーを怒らせた、
とある。
ウルトラマンの最終話における「地球は地球人自らの手で守るべきだ」という
ゾフィーのセリフを台無しにされた、というわけだ。
だが、この理由付けで結論を出すのはイササカ早急過ぎる。
もしゾフィーがセブンを疎ましく思っているとすれば、もっと根の深い部分がある
はずだ。

セブンの身辺から考えよう。

彼の家族構成は父と、亡くなった母に、姉と、実は「兄」もいるらしい。
兄貴がいる、というのは初耳の方も多いのではないか。
70年代以降の資料にはいっさい出てこないからガセネタの可能性もあるが、大伴昌司
によって、「ぼくら」昭和43年10月号の特集記事に記されている。

叔父・叔母のウルトラの父・母を含め、その血筋は超一流だ。(現在の勇士司令部の
部長職は、セブンの父が勇退しセブンの兄が継いでいるとも、セブンが継いでいる
とも言われ、定かでないが、セブンが恒天観測員をしていた頃は父か兄が部長で
あろう。)
セブンは「お坊ちゃん」なのだ。
が、ただの能なし坊ちゃんでなく、多芸に秀でていたことがかえって周囲を困惑
させることになる。

周知の通り、恒天観測の仕事は彼の独断でほっぽり出している。
もちろん、光の国に了解をとったかもしれない。しかし、そのような申請は一般に
どう扱われるだろうか。普通、簡単に許可は出ないはず。実力者の宇宙警備隊
参加に、みな諸手を挙げて賛成したのだろうか。
その考えはおそらく間違っている。当時彼はまだウルトラ兄弟の称号は持って
いないはずで、いくら血筋が良くても実力は未知数だ。

おそらくはセブンの父あたりが、裏から手を廻したに違いない。表立った形式を
とっていたならば、身体に故障をきたした際、誰かが救援に来ても良さそうな
ものだ。特に彼は血統書付きのご子息なのだし。上司がフォログラフィなんかで
「こっそり」と帰還を勧めたのも、そんな事情によるものではないか?

恒天観測部としても、実はこんなワガママで勝手なご子息がいなくなって、
内心ホッとしていたかもしれない。

セブンがわがままを通せる立場にいたことは、他の理由でも証明できる。
 

彼にはカラータイマーがない。一般に彼は急遽地球滞在になったため、それがない、
とされるが、これはおかしい。
ウルトラマンも地球滞在は急遽の事件だったはず。
本来宇宙警備とは無縁のレオやアストラでさえ、タイマーを持つではないか。
カラータイマーとはそもそも何なのか?
単なる「砂時計」ではなく、ウルトラ族が他惑星において活動するための、
生命維持装置だろう。

地球上においては、表面上3分計でもある(「3分」は嘘だという説もある。
事実、3分以上の戦闘シーンもあるが、これは報道映像上のマジックだ。
理屈をこねる必要はない。今さらカップラーメンも食べられるなんて言われ
ても、子供たちが戸惑うだけだ)。

戦闘中にタイマーが点滅し、「時間切れ」で力尽き、倒れることはあっても
絶命することはない。
だが、カラータイマーを破壊されたら終わりだ。
ウルトラマン、ゾフィー、タロウ、いずれも“一応”死んでいる。
ドロボンにタイマーを引き抜かれた新マンは、哀れ、身体が潰れてしまった。
一般に考えられている通り、異星で活動するウルトラ族にとって、命の綱であること
に間違いない。
だが、セブンには、帰還後の客演時も、2度目の地球滞在時にもカラータイマーは
付けていない。既にビームランプを改造済みということで、必要がなかったのか?

違う。セブンはカラータイマーなどという無粋な器械の装着を拒否したのだ。

セブンは哀愁漂う文化人なのだ。デザイナー成田亨のセリフではないが、
「こんなロボットみたいなもの…」と思ったか。時間で管理されるサラリーマンの
タイムカードじゃあるまいし、と思ったか。

セブンのみ、“3分間”の時間制限がなく、他の兄弟にはできない、「途中充電」
という特技がある。これは特異体質というより、カラータイマー非装着による性質
ではないだろうか。
エースやタロウもカラータイマー以外にエネルギー集約装置(スラッガーの孔や
プロテクターの釦)があるにもかかわらず、自力での再チャージはしていない。
ゆえに、カラータイマーにエネルギー管理の制限を受けている可能性がある
という推論が成り立つ。
 
カラータイマー非装着は、生命維持の上で非常に危険を伴うのであろう。だが、
自由人たるセブンは、束縛を嫌い、わがままを通してしまったようだ。

ちなみにタイマー非装着のウルトラ族は他にもいる。
1人はセブン上司だが、その容姿はセブンと同一。そんなことがあるのか?
セブンの父、或いは兄なのか。一般にフォログラフィとされる映像は、上司本人の
姿ではなく、セブンに鏡を見立て、自らに語りかける幻影を現わしたのではない
だろうか。
あと、セブン21。いったい何なの、この人?話のネタに加えたくないので省略。


ところで話のついでだけど、情報筋によると、ウルトラ族の体色は、実は
シルバー/レッドではなく、シルバー/ブルーであり、赤いのは強化スーツを
着用しているのだという説もある(情報誌によっては、シルバー/グリーンと
いう説もある)。着用の対象はカラータイマーと同様のようだ。

まぁこの噂も小学館系の情報で、ウルトラマンは服を着ているのか否か、という
論争に対する勝手な憶測のひとつに違いない。


話がだいぶ脱線してしまったが、
セブンは「自由奔放なお坊ちゃま」であったことが結論。

こんな放蕩息子に対してゾフィーはどんな感情を抱くであろうか。
ゾフィーは、“叩き上げ”で宇宙警備隊の隊長まで登りつめた男だ。
ウルトラマンキングの孫である、という話もあるが、情報誌でさえ、それを“噂”
として紹介している。
キング自身、ウルトラの国でも伝説の人物で、正体不明とされ、詳細定かでない。
(キングの隠し子という噂もあるが…)隊長の任にそぐう血統書の捏造が
必要だったのか、ゾフィー人気を煽るために小学館が無理やり話を創ったに
違いなく、きっと孫説もガセネタだろう。

彼は大戦で功をあげるだけでなく、ウルトラマンタロウ、つまりウルトラの父・母の
実子の家庭教師までして、細かい点数稼ぎも怠らない。
ゾフィーの隊長の座は、そのような涙ぐましい努力の上に成り立っているのだ。

苦労人のゾフィーの目に、セブンの放蕩ぶりはどう映ったか。苦々しい限りと映る
のもやむを得まい。それでもセブンが単にドラ息子であってくれたら、まだ良かっ
たのだ。セブンは宇宙警備隊に入隊するや、数々の戦績、功績をあげ、あっけ
なく栄光を掴んでしまう。これではゾフィーも面白いはずがない。

しかもセブンが勇士司令部の部長に就任しているのが事実ならば、大隊長に
並ぶ地位であり、兄弟の長兄とはいえ、隊長職のゾフィーは実質、格下なのか。
TV作品の中でも、内山まもる作品内でも、セブンはゾフィーを『にいさん』とは
呼ばず、呼び捨てである。

以上のように、ゾフィーがセブンを忌み嫌うだけの理由は確かに存在する。


ウルトラ兄弟の中で、セブンのみが地球常駐の任務を2度務めている。
『さらば怪獣VOW』は、過労死さえ起こしかねない激務を2度も任命されている
のも、隊長のゾフィーに睨まれているせいだとしている。
しかし、これも早合点だ。血統の良さのみならず実績さえ手に入れたセブンに
もはや敵はない。いかなゾフィーといえど、裏工作さえ並大抵ではいかない
はずだ。

むしろ、これこそ、セブンのワガママだと言える。
セブンは地球を誰よりも愛していたのだから。
常駐勤務だけでなく、客演が多いことからもセブンの地球愛が伝わるが、
各作品をじっくり鑑賞すると、他の兄弟たちは、セブンほど、地球に愛情を
感じているようには思えない。

まぁ、今回のわがままは、宇宙警備隊としても、厳しい戦地に最強の戦士を
送り込むのは当然とも言えるし、前回の常駐は「個人旅行」であり、警備隊
としては初めての正式な辞令なわけだから特に問題もなく、願ったり叶ったり
だろう(今回は正式な辞令だから、新マンによる救援もありましたね)。


何だか全ての問題が“セブンのわがまま”で解決されてしまうようだが、
はたして彼は「嫌われ者」であったのか。
自由奔放な性格の人間は、とかく誤解を受け易い。だが、彼の素直で優しい
心はほどなく受け入れられたであろう。
セブンは亡くなった母の代わりに姉の手で育てられた。
セブンは純粋で真面目、人懐こく思いやり豊かだ。我儘ながらも傲慢とならず
平和を愛する美しい心に育ったのは、優しい姉の愛情のおかげだろう。

その優しさのせいで、セブンの“正義”は勧善懲悪たりえない。
それゆえ時に苦悩し、それが弱点となってしまうことも多かった。

ウルトラマンは神のような存在だったが、セブンには血と肉が感じられる
のもそのためだろう。

ウルトラマンは、ガヴァドンを天の星にして、シーボーズを怪獣墓場に返した。
だが、前者の行為もガヴァドンを救ったわけでなく子供達の願いを叶えたに
過ぎない。うがった見方をすれば、子供らに罵倒された彼が、汚名挽回の
ために打った苦肉の策にも見える。
視聴者も子供らも、ウルトラマンにうまく誤魔化されたのかもしれない。
だって、それにいたるまで
もともと暴れたりしないガヴァドンを、さんざんどつきまわしてたじゃないか。
シーボーズだって、言うこと聞かない子供を「あやす」というより、警官か
駅員が、邪魔な酔っ払いでも扱うかのような対応で、いかにも『面倒臭いなぁ』
という態度だった。『これも仕事のうちだから』って感じで。
シーボーズも、やっぱりさんざんどつかれてる。
「邪魔だ」という理由だけで宇宙に返そうとしたスカイドンなんて、最後は
面倒になって木っ端微塵に破壊してしまった・・・ひどい!

ジェロニモン戦の際も、イデを立ち直らせたいのはわかるけどが、そのために
ピグモンを見殺しにしている。例をあげればキリがない。
ウルトラマンって、けっこう冷徹。

まぁ神様ってそういうもんだ。

セブンにはそれができない。両者の違いは作品の性格上、仕方がない。
同じ『怪獣モノ』でも、「ウルトラマン」は“害虫駆除”のお話であり、
「ウルトラセブン」は“戦争モノ”の傾向が強い。後者のほうが「人間」を
描きやすいのは当然だ。

モロボシ・ダンというのはセブンそのものだ。
ウルトラセブンと薩摩次郎が合わさった新しい人格とみる意見もあるが、私は
そうは思わない。
ウルトラマンのように地球人に乗り移ったわけではないため、第3者の目はない。
だからこそ、より地球人に同化してしまう。
マックス号を見て「スゴイなぁ」と思わず漏れる言葉も、セブンとは別の人格の
せいでなく、それだけ地球人として“なりきって”しまっているから。
染まりやすいのも、セブンの素直な性格のあらわれかもしれない。

ダンは純粋で好感のもてる青年だ。これこそがセブンなのだ。
際立つ純粋さは問題を起こすことも多い。
だが、彼はウルトラ警備隊のメンバー皆に好かれていた。
フルハシやアマギ、ソガの3人は、互いに必ずしも仲がよさそうに見えないシーン
もあったが、ダンに対しては、皆が好意を持っていた。
まるで往年の「カルピス劇場」の主人公達のようだ。
彼のことを“鼻持ちならない奴”と思うとしたら、そう思う人間の性格が曲がって
いるのだ。
まるっきり肯定してしまう人も問題はあると思うが…。

セブンの優しさは他シリーズの客演時にも見られる。
超獣にされてしまったバクタリを、元のバクに戻すために彼はやってくる。
本来、敵を倒すためのエメリウム光線を改良し、還元光線を開発していたのだ。
また、ミニトータスを宇宙に運び連れていくという、たったそれだけのことで、
はるばるM78星雲からやってくる。
ミスを犯した従兄弟、タロウの尻拭いの意味もあったとはいえ、その行動は
慈愛に満ちている。

セブンの客演はエースの時代に多い。2人は仲が良いらしいが、セブンが
エースを特に可愛がるのには訳がありそうだ。
エースは捨て子だった。
ウルトラの父に拾われて育ったそうだから、セブンとも小さい頃から仲良く
していたのだろう。父の養子になったという話はないが、セブンにしてみれば
可愛いイトコのようなものだ。
父母のいないエースをより可愛がるのもセブンの性格なら当然だ。
ましてやセブン自身が母を亡くした身。エースの気持ちは誰よりも解るのだろう。

だがセブンの客演は、兄弟全員集合時以外では“応援”という形が多く、
出しゃばって自ら手を下すことはなかった。
いくらかの勇気を分け与え、弟達自身の手で難関を切り開くチャンスを与えた
のだ。(それにしても、セブンはエースに医療行為さえ施している。セブンの
知的能力は、とどまることを知らないのか!)



ウルトラマンレオ、おおとりゲンに対する鬼コーチぶりは“愛のムチ”を超えて
いたかもしれない。
だが許せ、誰だって健康を害している時にはイラつくこともあろう。
光線技もロクに使えない鈍臭いレオを鍛えるのは辛い仕事だったのだ。
しかもそこは訓練場ではない。地球防衛の実戦の場なのだ。
セブンは肩に、レオの命と地球の運命を背負い込んでいたのだ。
思うに、セブンは、怪我を負った時点で任務交代も可能だったのではないか。
だが、彼は救援のウルトラサインさえ送信していない。

そこにウルトラマンレオが現れた。彼はマグマ星人に滅ぼされたL77星の
王子である。素質は充分だ。
彼を鍛え上げることで、レオ自身も過去の傷から立ち直り、自分が欠員と
なるために起こりうる宇宙警備隊の人員不足も防げる。
レオを一人前にすることこそ、宇宙の平和を維持する最良の道と判断したに
違いない。
だが大きな賭けだ。失敗すればレオも地球も失いかねない。
愛の鞭が厳しいものになるのはやむをえまい。
そして彼を愛すればこそ、鬼にもなれた。

レオも父母を失った身なのだ。「彼を立ち直らせてやりたい」
そんな気持ちも強かっただろう。
レオがアストラとともにウルトラ兄弟の末弟に加えられ、どんなにか嬉し
かったことと思う。だからこそ、レオがそろそろ一人前になったかという
ある日、気持ちに緩みが生じたか、シルバーブルーメの襲撃に遭い、
生死不明となってしまうのだった。
レオも、そんなセブンの愛を充分わかっていたに違いない。

若干わがままな欠点はあるものの、やはりウルトラセブンは優秀で
心の暖かい人物であり皆に好かれているらしいことがわかった。
そんなセブンに対し、はたしてゾフィーが“やっかみ”の気持ちを抱くで
あろうか?

我々から見ればゾフィーには不明瞭な点も多いが、そんなねじ曲がった
性格であれば、ファミリーが見抜けずに隊長に就任させるということは
ないだろう。
もしゾフィーがうまく周囲を欺いているとしても、そうそう「安易な」行動は
とらないはず。とすれば「怪獣VOW」が指摘する、「あからさまな」いじめに
見える行動もそれに値しない。下衆なかんぐりに過ぎないのだ。

内山まもる氏のウルトラ漫画、特に『ザ・ウルトラマン』は、後の資料に
多大な影響を与えている(余談だが、『ザ・ウルトラマン』によれば
セブンはウルトラ戦士ナンバーワンだ!)。
どのみち講談社・小学館系の情報や資料など、思いつきのでっち上げ
も多いのだから私は内山ワールドも“資料”に昇格させても良いの
ではないかと思う。
「ザ・ウルトラマン」では、ゾフィーとセブンはナンバーワン同士、
最も信頼し合い、尊敬し合った仲として描かれている。
それこそが答えだ。
2人の美しい関係に、よけいな心配など無用なのである。

(終わりです。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。)